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慶應義塾大学医学部 内科学教室 腎臓内分泌代謝内科

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透析医療の魅力

脇野修


腎臓内科医の守備範囲は近年極めて広がっています。皆さんは慢性腎臓病(CKD)という言葉を御存じでしょうか。CKDは年齢とクレアチニン値で患者さんの腎機能をeGFRという値で診断し、これが60以下であること、さらに尿タンパクなどの腎臓の異常が認められる場合診断される疾患です。この疾患が重要視されるようになった理由はCKDが心血管病発症の極めて強い危険因子となっているだけでなく末期腎不全へ移行させる危険因子となっているからです。CKDの最終状態が腎不全であり、ここで必要になる医療が透析医療および腎移植医療となるわけです。腎臓内科医の役割は、CKDの病態を熟知し、透析へと移行させないことと、その逆に透析療法についても熟知し透析患者の生命予後、生活の質を守るという2つの側面を有しているのです。やや手前味噌になりますが、心臓、肝臓を始めとした重要内臓臓器でそれが機能不全、機能廃絶になってもまだ生命を永らえさせる治療をしているのはこの透析療法だけであります。それでは透析療法の魅力とは具体的にどのようなものでしょうか。

高い専門性

透析は極めて高い専門性を持った医療です。緊急透析の際のブラットアクセスすなわち透析カテーテルの挿入は技量を必要とします。血液透析の構成する様々な要素、すなわちダイアライザー、血流ポンプといった機器の知識も必要です。さらに透析のエッセンスは除水と溶質除去でありますがその設定については専門医でしか知り得ないポイントがいくつもあります。血流一つの設定でも心機能との関連、尿毒症の程度、患者の体型との関連などを加味して設定する必要があります。全く考えずに緊急透析の導入はクリニカルパスのように一律にオーダーすることもありますが、トラブルが起こった時への対応が専門外の先生では困難です。また専門医が見れば良く考えている透析のオーダー(透析処方とも言います)とルーチンで決めているオーダーの違いはすぐわかります。この専門性が透析医療の一つの魅力であります。

チーム医療のリーダー

透析医療は腹膜透析でも血液透析でも看護師、医療工学士、栄養士などの方々とのチーム医療であります。皆さんはチーム医療のリーダーであることを求められます。大きな病院では透析室、透析医療は重要な部門であり、その管理の中心となることが求められます。頼られる職であるわけで、この点も透析医療の魅力であると思われます。

高度な終末医療

透析医療はある種終末期医療です。もしこの医療技術がなければ、腎不全の患者さんは死亡する確率が高い状況となります。呼吸不全の患者さんの人工呼吸器のように透析医療は患者さんの生死を決めている治療といえます。最近は平均余命が伸びてきた関係で、高齢者の透析導入が増えてきております。2009年現在での新規導入患者の平均年齢は67.3歳であり、これはもう透析医療が高齢者医療であることを示しております。そうした意味でこれに精通する腎臓内科医はその患者さんにとって極めて重要な立場にあるといえます。

一般内科医としての臨床能力

その一方で透析医は一般内科医としての能力が必要とされます。維持透析患者の死亡原因を見てみますと1位が心不全、2位が感染症、3位が脳血管障害および悪性腫瘍となっております。このことは透析患者を管理するには循環器内科の知識および感染症内科知識、神経内科の知識が必要になります。感染症の知識は重要で、透析患者さんは基本的にimmune-compromised hostなのです。抗菌薬が多く使われており、耐性菌の感染症が多いことや、結核症が多いことが特徴です。またシャント、腹膜カテーテル挿入などにより敗血症や、重症の感染症になる確率が高くなります。さらに死因には現れませんが透析患者には特有の合併症があります。整形外科的骨関節疾患の合併症は2次性副甲状腺機能亢進症、透析アミロイドーシスなどがその代表です。つまり、透析患者の特徴を踏まえた管理が重要でこれは一般内科の知識を有する腎臓内科でなければ不可能なのであります。透析医療に特徴な魅力といえます。

様々な科との連携

様々な科で出現する腎不全患者。例えば手術後、重症感染症、敗血症性ショック、薬剤性腎障害。このような事態は外科、内科を問わずどの科でも起こります。これに緊急透析で対応できるのは腎臓内科、透析科だけです。また先述したように、透析患者の高齢化に伴って透析患者も様々な合併症を持つようになりました。これらには循環器、感染症といった内科的な合併症だけではなく、整形外科的なもの、悪性腫瘍を中心とした外科的なものなどもあります。これらの科は透析について接点がない科です。以前は透析しているということだけで手術はハイリスクであると忌避されていましたが、近年では術前後の管理を腎臓内科医、透析医と連携することで積極的に手術適応が広がっております。透析が手術の禁忌の原因になることはないのです。以上のように透析医療はすべての科との連携が求められるようになっているのです。別の意味ではあらゆる科から感謝されることが多い科なのであります。

特殊療法への応用

透析療法は体外循環を用いた血液浄化療法であり、この技術を用いた特殊療法への応用がききます。CHDF(持続的血液濾過透析療法)、血漿交換療法、血液吸着療法などがそれです。これらはその治療を受け持つ各科を中心に行われますが、腎臓内科医、透析科医が相談を受けることもあります。またこのような治療法に特化して大学病院を始めとする高度医療機関で血液浄化部が独立することもあります。そしてこれらの血液浄化部は基本的には腎臓内科専門の先生が管理することがほとんどです。このように透析療法に通じれば他の特殊治療への発展が可能であるという魅力があります。

当科での活動

当科では血液透析に関しては血液浄化センターと共同で維持透析患者の管理、末期腎不全患者の透析導入を行っております。週1回の透析カンファレンスでは血液浄化センターの医師とのDiscussionで治療方針が検討されます。また帰室2年目には中央透析室配属となり4ヶ月間血液透析の実務に携わります。さらに近傍のサテライトの透析クリニックにパート医として働き血液透析業務に携わることができ、これは透析医療の実践の場として活用することができます。腹膜透析については腹膜透析グループの先生の指導のもと、腹膜透析の導入、腹膜透析患者の管理を経験できます。

おわりに

以上、透析療法の特徴、魅力を述べさせていただきました。急性の血液浄化から慢性の維持透析患者の管理およびその合併症の治療まで透析療法は守備範囲が極めて広いのです。しかも維持透析患者の人口はまだ増加しており、2009年現在29万人います。透析患者を管理する医師の需要は多いと言えます。また多くの科との連携、多くのコメディカルとの連携が求められる集学的な治療法であります。皆さんも腎臓内科医、透析医となって多くの人の役に立つ医療を実践してみてください。


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