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慶應義塾大学医学部 内科学教室 腎臓内分泌代謝内科

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血管を標的とした生活習慣病診療

市原淳弘

―血管内科医を目指して―

血管内科医とは?

高血圧・脂質異常症・糖尿病などの生活習慣病は、心筋梗塞や脳卒中などの脳心血管合併症の発症リスクが高く、一旦発症すると循環器内科や神経内科で華々しいインターベンション治療が施されます。その後は2次(再発)予防のための薬物療法と機能温存のためのリハビリテーションを受けながらQOL(生活の質)の低下した日常を余儀なくされています。それを克服するために現在、心臓・中枢神経・血管などの再生医学に関心が集まり、臨床応用に向けての取り組みが盛んになされております。これら取り組みは無論、我々人類の生老病死との戦いの中で大切な一つであることに違いありませんが、予防という取り組みがなされない限り再生した臓器もまた病んでいくことを決して忘れてはなりません。
従来の医療において、心筋梗塞や脳卒中の一次予防のために、高血圧に対しては血圧コントロールを、脂質異常症に対しては血清脂質管理を、糖尿病に対しては血糖管理を、非薬物・薬物療法を用いて行ってきました。しかし、高血圧にしろ脂質異常症にしろ糖尿病にしろ、障害される臓器は血管でありその終末像が心筋梗塞や脳卒中であります。そこで最近、これら生活習慣病の診療において、血管の状態を定期的に評価し診療に反映させていく考えが広まってきました。この考えのもと実際の診療において、「血管を標的とした診療」を行う医師が、血管内科医(Vascular Internal Physician: VIP)であります(図1)。

図1

血管を標的とした診療

現在日本中に広まりつつある「血管を標的とした診療」の発信源は、間違いなく慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科です。現在、当科で実際に行っている診療の流れについて以下に簡単に述べてみます。

  1. 全ての生活習慣病初診患者において、24時間血圧、中心動脈血圧(Augmentation Index)、ABI、脈波伝播速度(PWV)、スティフネスインデックス(CAVI)、尿中微量アルブミン、頚動脈エコーによるプラークスコアと内膜中膜比(IMT)、眼底動脈KW分類、糸球体濾過率、血清脂質、耐糖能、内分泌・炎症サイトカイン・酸化ストレスの各マーカーを1ないし2外来診療において測定し評価します。そしてその評価を元にして、現在患者がメタボリックドミノ(図2)の中でどこにいるかを説明しています。自身の問題の深刻さについて理解を深め、治療に対する前向きな姿勢を引き出すことが狙いです。
  2. 全身のいずれかの血管に問題があった場合、その原因(血圧and/or脂質and/or耐糖能)を考察し、薬剤による介入を行います。全ての血管に問題が無くても、非薬物療法で生活習慣の是正を行っています。
  3. 定期的に(問題が無い項目においては年1回・問題があった項目においては3~6ヶ月毎に)再評価を行い、患者を励まし治療を継続しております。

図2

おわりに ―血管内科についての所感―

現状のように予防よりむしろインターベンション&再生医療に偏った嗜好性が続くと、どのような近未来が予想されるでしょうか?例を挙げてみます。50歳代の某患者が心筋梗塞を発症しすぐに再生医療が施されました。しかし、原因となる生活習慣病への介入は軽視されたままなので血管は病み、その数年後にまた心筋梗塞を発症し、また再生医療が施されることになります。その後は2年毎に心筋梗塞・再生医療の繰り返しで、患者本人は以後の人生を病との闘いで終始し、結局、国や家族にも大きな負担がのしかかってしまうのです。
もし原因である生活習慣病への介入に力を入れていたのなら、どうせなら現在の生活習慣と闘い続けることを選択していたのなら、その患者と家族の人生は、もっと充実したものになっていたでしょう。現在(の生活習慣)に目を背けて問題が生じてから何とかしようという考えではなく、今の苦難(生活習慣の是正)に真っ向から取り組んでいく、そのような生き方から真の幸福が生まれるのではないでしょうか?
最後に独り言を。二十数年間、臨床をしてきて思っていることがあります。一般に医師は患者の疾患を診察し治療しています。しかし、腎臓内分泌代謝内科の診療は、それとちょっと違うのです。うまく言えませんが、疾患を診ているだけでは決して良くならないのです。患者の生活習慣にまで踏み込んで治療するために、ひとりひとりの人生(生き方)を診ている(観ている)気がしています。だから奥が深く、いまだに教えられ興味の尽きることがありません。そう考えると、腎臓内分泌代謝内科というネーミングは的を射ていないのかもしれません。人生内科、生活内科、まあせめて血管内科かな、と思うのであります。


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