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慶應義塾大学医学部 内科学教室 腎臓内分泌代謝内科

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面白くて新しい内分泌診療

柴田洋孝

内分泌疾患はまれな病気?

内分泌疾患には、間脳・下垂体疾患、副腎疾患、甲状腺疾患、副甲状腺疾患、性腺疾患、糖尿病などが含まれ、頻度では糖尿病、甲状腺疾患、副腎疾患が多くを占めます。しかし、近年特に注目を集めているのが副腎疾患です。高齢化に伴い、健診などで偶然発見される副腎腫瘍(副腎偶発腫瘍と呼ぶ)が増えており、その適切な診断や治療は内分泌代謝科専門医に求められています。また、原発性アルドステロン症は、高血圧と低カリウム血症がある時に疑われる二次性高血圧で、高血圧患者の0.5%~1%程度の稀な疾患と考えられていましたが、低カリウム血症の有無にかかわらず、アルドステロン/レニン比の高値をマーカーにスクリーニングを行った結果、「高血圧症の5%~15%を原発性アルドステロン症が占める」という驚くべき報告がなされています。日本では約3,500万人が高血圧症であることを考えると、少なくとも約170万人ぐらいの原発性アルドステロン症患者が診断されずに、本態性高血圧症として降圧治療を受けていることになります。「国民病」にもなっている糖尿病の合併が原発性アルドステロン症に多いのも特徴で、原発性アルドステロン症を一例でも多く、迅速な診断、治療を行うことは内分泌内科医の大きな任務です。

高い専門性がある内分泌代謝科専門医

前述のように、原発性アルドステロン症などの副腎疾患や甲状腺疾患の患者数は毎週、当科外来でも初診患者があとを断ちません。日本では、まだ内分泌代謝を専門とする医師はさほど多くない現状があり、当科での専門的な研修により、あなたもその一人になることができます。
原発性アルドステロン症は、本態性高血圧と比べて、脳卒中や心疾患が明らかに多いために迅速な診断が求められ、実際には3つのステップで診断を行っています。
(1)まず、外来の高血圧患者の中から、血中アルドステロン/レニン比の高値を指標に原発性アルドステロン症疑い例のスクリーニングを行います。(2)次に、それらの患者の中から、腹部CTスキャンによる腫瘍の発見と並行して、経口食塩負荷尿中アルドステロン排泄、立位フロセミド負荷試験、カプトプリル負荷試験、迅速ACTH負荷試験により、アルドステロンの自律的産生による確定診断を行います。(3)さらに、それらの患者を対象に、ACTH負荷副腎静脈サンプリングを行って、アルドステロン産生病変の局在診断を行い、片側病変であれば片側副腎摘出術を、両側病変であれば薬物療法を行うことになります。
この3段階の診断過程では、複数の診療科と協力体制で行っています。まず、(1)や(2)の診断段階では、中央臨床検査部と共同で、24時間蓄尿中の約70分画のステロイドプロファイルをガスクロマトグラフ/質量分析法により測定し、ステロイド産生の動態の解析を行い、原発性アルドステロン症の組織型やコルチゾール産生病変の合併の予測などに利用しています。また、局在診断で行う副腎静脈サンプリングは、放射線診断科による高度の技術により施行され、検査中にACTH負荷も行うことにより局在診断能を高めています。さらに、手術の適応がある場合には、泌尿器科による腹腔鏡下副腎摘出術が行われ、術後の早期回復と合併症の予防が行っており、これらの複数の診療科の共同による高度先進医療を駆使しています。
また、当科は日本内分泌学会の「原発性アルドステロン症検討委員会」や厚生労働省「副腎ホルモン産生異常に関する調査研究班」のメンバーとして参加し、日本におけるガイドラインを決めるリーダーシップをとっており、当科や関連病院からの貴重な症例をもとにした臨床研究にも一緒に参加できます。

内分泌代謝科専門医について

当科に入局すると、内分泌代謝科専門医(日本内分泌学会)の取得が可能です。取得申請の必要事項は、(1)申請時に継続3年以上または通算5年以上、日本内分泌学会の会員であること、(2)申請時に日本内科学会の認定医(または専門医)として認められていること、(3)認定内科医取得後、申請時までに3年以上、日本内分泌学会認定教育施設で内分泌代謝科指導医の指導のもとに内分泌代謝疾患の診療に従事していること、(4)内分泌代謝疾患臨床に関わる学会発表または論文発表が5編以上あり、少なくとも2編は筆頭者であること、(5)内分泌代謝疾患相当例(間脳・下垂体疾患4例、甲状腺疾患7例、副甲状腺疾患・カルシウム代謝異常3例、副腎疾患4例、性腺疾患1例、糖尿病5例、高脂血症3例、肥満3例の合計30例)以上の入院および外来の診療経験を有することの5項目を満たすことが申請に必要です。そして、申請受理後に内分泌代謝科専門医試験(筆記試験)に合格すればあなたも内分泌代謝科専門医になります。当科へ入局して、病棟および外来の内分泌疾患の臨床経験を積むうちに、上記の症例を集めることは難しくありません。

内分泌の専門医は役に立つ?

大学病院の医局に帰室する主な目的は、各領域の臨床経験を積んで専門医を目指しながら、基礎および臨床研究を行うことにより医学博士号の取得にあります。内分泌学の専門医になるメリットは大きく2つのことがあげられます。まず一つは、内分泌検査はホルモンを測定する臨床検査医学であり、内分泌臓器の機能異常以外にも、循環器疾患(心不全など)、腎疾患(慢性腎臓病、腎血管性高血圧)、代謝疾患(動脈硬化症)などの診断や病態評価には欠かせない検査になります。したがって、その他の専門医(腎臓専門医、高血圧専門医、糖尿病専門医など)の取得にも役立ちます。また、もう一つのメリットは、入局後に行う基礎研究や臨床研究において、内分泌学の知識は研究に直結して役に立ち、新しい検査や治療法の確立につながる可能性もあり、医学博士号の取得にも役に立ちます。

新しい内分泌診療とは

内分泌疾患の臨床の基本は、多くの典型的な内分泌疾患患者を診て、カンファレンスで議論することにより、自然に身についてきます。つまり、大学病院に紹介されてくる内分泌疾患の疑いが強い患者を的確に診断する能力を取得することにあります。しかし、これからの新しい内分泌診療はそれだけでは不足です。内分泌代謝科専門医であるあなたが、高血圧や糖尿病などで通院している多くの患者さんの日常臨床の中に潜む原因疾患を、積極的に見つけていくことが求められています。その意味で、新しい内分泌診療は、高度の臨床検査医学であり、あなたが自分の力で、最初から最後まで診断および治療を行うことが可能な魅力的な専門領域です。


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