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慶應義塾大学医学部 内科学教室 腎臓内分泌代謝内科

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代謝病学と2型糖尿病医療の魅力

河合俊英

「体重を1kg減量するのに、何kcalのエネルギーのマイナスバランスが必要でしょうか?」

疾病治療の原則は、いうまでもなく、その成因、原因を明らかにし、それに対して効率のよい対策を施すことにあります。

代謝疾患に分類される疾病には、ウィルソン病、アミロイドーシスなど、比較的稀なものもありますが、実地臨床で遭遇するのは、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症などが主なものです。日本において、脂質異常症の症例は約2,200-2,500万人にも及ぶと推定されています。高コレステロール血症は、早くから動脈硬化性疾患のリスクとしてさかんに研究が行われてきました。時代の経過と共に、「beyond cholesterol」として、マルチプルリスクファクター症候群という病態が注目され、現在は、「メタボリックシンドローム」という病態概念として確立されています。「内臓脂肪の蓄積と、それを基盤にしたインスリン抵抗性および糖代謝、脂質代謝異常、高血圧の集積するマルチプルリスクファクター症候群で、動脈硬化を発症しやすい病態」と定義されますが、日本人では約2,000万人が該当すると推定されています。Key wordとなるインスリン抵抗性の原因としては、(1)遺伝的素因、(2)高血糖による糖毒性(glucose toxicity)、(3)高脂肪食・運動不足などのlife styleによる肥満の3つの因子の交絡が重要です。

2007年(平成19年)の調査では耐糖能障害の症例は2,210万人にも及び、この中で糖尿病と診断される症例は890万人、その90-95%は2型糖尿病と推定されています。2型糖尿病は、インスリン分泌低下とインスリン感受性の低下(インスリン抵抗性)の両者が、発症にかかわる病態として分類されます。糖尿病の加療の目的は、以前は「昏睡との闘い」、約15年前までは主に「3大合併症との闘い」、ここ10年は「大血管障害との闘い」と変遷してきました。現在でも、急性代謝失調、3大合併症や大血管障害の発症を予防し、かつその進展を防止することに変わりがありませんが、何よりも症状のない方のQuality of lifeを損ねないことがポイントになります。ここに糖尿病、ことに2型糖尿病医療の魅力があります。すなわち、症状がない方に対して放置するとどうなるかを教える「糖尿病教育」ということが大きな特徴と考えられる訳です。皆さんも医師となり、当たり前のように「○○先生」と呼ばれる毎日をお過ごしのことと思いますが、糖尿病教室やコメディカルとのディスカッションを通じて、半分は学びながら、半分は教えるという教師としての側面を合わせもつことは、常に初心を忘れずに医療を施すことができることにつながります。診療の中で得られた、「何を食べたらいけないんだろう?」「どんな運動をどれくらいしたらいいのかな?」という実生活に基づく疑問を、基礎研究を通じて、解明していくことができる点も魅力の一つです。

上述のように、疾病治療の本分は「診断」をして「対策を施す」ことにありますが、内科の本分は、「処方」という対策をとることにあります。2型糖尿病の診療では、「食事処方」「運動処方」「内服薬の処方」「インスリンなどの処方」の大きく4つの処方せんを作成します。この処方の組み立てを考える際にも、個々の症例の生活パターンを熟考し、「この方の生活パターンのどこにメスを入れるか」ということが仕事となってきます。例えば、猛烈サラリーマンの糖尿病の方が、「朝抜き、昼そば、よるドカ食い」の食生活をしている場合、鉄則である「1にカロリー、2にバランス」の食事療法を教えても実践していただけないことがあります。こうしたケースでは、すぐに改善が望めないことがありますので、「夜のドカ食いの一品を減らして、朝野菜ジュースを摂取するように」指導すると有効であることもあります。要するに処方が一律にマニュアル化できるものではない、ということも魅力の一つです。「内服薬の処方」についても、現在、スルフォニル尿素系薬剤、速効型インスリン分泌促進剤、ビグアナイド剤、チアゾリジン系薬剤、αグルコシダーゼ阻害剤と5種類の系統の薬剤の処方が可能となり、より患者さんの病態、生活パターンに応じることができるようになってきました。さらにインスリン分泌に影響するインクレチンという消化管ホルモン(GLP-1)あるいは、その分解阻害剤(DPP-Ⅳ阻害剤)の臨床使用が進められ、新たな治療の側面も期待されます。

日本の人口減少が懸念されていますが、日本人における糖尿病患者数は、さらに増え続けると推測されています。前述のように、耐糖能障害の症例は2,210万人と推定されている一方で、糖尿病専門医は約3,700人しかいません。1人の専門医が5,000人以上の症例を診る計算になるほど糖尿病専門医は不足しています。当科では、日本糖尿病学会の定める糖尿病専門医取得のための資格を得られ、その取得が可能な3年間のプログラムを作成しています。

体重を1kg減量するのに、約7,000kcalのエネルギーのマイナスバランスが必要であることを、広く知っていただくためにも、是非一緒にやりましょう。

摂取エネルギーの目安

消費エネルギーの目安

ざるそば

525 kcal

1万歩のwalking

200-250 kcal

味噌ラーメン

535 kcal

jogging 30分

200-250 kcal

ナポリタン

666 kcal

swimming 20分

200-250 kcal

かつ丼

981 kcal

テニスの練習 20分

150-200 kcal

ひれかつ定食

1313 kcal

ゴルフ 16分

80 kcal

表 エネルギーの出納
(高血圧-肥満・メタボリックシンドロームー食事ガイド(建帛社)、糖尿病治療ガイドより)


骨を診る内科医

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