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慶應義塾大学医学部 内科学教室 腎臓内分泌代謝内科

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NAFLDへの誘い

入江潤一郎

メタボリックシンドローム・糖尿病と脂肪肝(NAFLD)

臨床の場において"脂肪肝"と診断された患者さんに遭遇することは非常に増えています。いわゆる"脂肪肝"は健診受診者でさえ20-30%に、BMI30以上の肥満者においては70%にも認めるとされる高頻度の病態です。皆さんが研修された中でも一度くらいは"脂肪肝"を持った患者さんがいらしたのではないでしょうか。しかし皆さんはこの"脂肪肝"をどの程度重要視してきましたでしょうか?"脂肪肝ぐらい"と軽視していませんでしたでしょうか?
この"脂肪肝"の診断は本来ならば肝生検にて下されるべきですが、実際の健診や臨床の場では、肝炎ウイルスマーカーが陰性で"AST(GOT)、ALT(GPT)値が高目であること"や、"超音波検査でbright liverであること"などから診断されていたと思います。従って極めてファジイな集団を捉えていたことになります。特に近年は、内臓肥満を伴うメタボリックシンドローム患者に高頻度に合併する、アルコールの過剰摂取を伴わない脂肪肝を、非アルコール性脂肪肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease (NAFLD))と認識し、それを非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis(NASH))、さらに肝硬変、肝細胞癌に進行する発症母体として厳重に注意をするようになってきています。
一方、内分泌代謝領域からみると、近年までは脂肪肝の存在はあくまでも余剰なエネルギーの蓄積にすぎず、特に代謝異常の病態には関与していないと考えられてきました。しかし最近になり脂肪肝の存在そのものが、肥満などとは独立して糖尿病発症の強力な誘因となることが疫学研究から示されてきました(注1)。現在では脂肪肝は糖尿病の前段階ではないかと考えられ始めています。われわれ腎臓内分泌代謝内科ではこのメタボリックシンドロームに高頻度に合併する脂肪肝、すなわち肝臓の脂肪蓄積が、メタボリックシンドロームで中心的役割を担っており、また治療のターゲットとすべき病態、と考えています。

メタボリックシンドローム・糖尿病と脂肪肝(NAFLD)の臨床

脂肪肝の患者さんを診る機会が多いのは、実際の臨床の場では、糖尿病や肥満に合併している患者さんを診る機会が多い腎臓内分泌代謝内科の医師であるといえます。しかし現在まではこの脂肪肝の病態には必ずしも多くの注意が払われてきませんでした。実際、現時点では有効な脂肪肝の治療法や脂肪肝の評価法は明確ではありません。そこで腎臓内分泌代謝内科ではこの未知の領域に、基礎医学から得られた知見を適応し、新しい臨床指標や治療法の開拓を目指しています。
今世紀に急増すると考えられるメタボリックシンドローム・糖尿病の患者さんを、血糖の管理に終始するのではなく、肝臓や脂肪組織など全身の臓器のネットワークを考えながら治療することが出来るようになる、そのような医師になるトレーニングを腎臓内分泌代謝内科では積むことが出来ます。

基礎医学の臨床応用-新たな治療法の探求

臨床の視点から基礎医学研究を組み立て、そこから得られた知見を臨床に反映させていくのが当研究室の使命と考えています。そこで、いままで脚光を浴びてこなかった肝臓や胆汁酸をターゲットとした糖尿病やメタボリックシンドロームの治療に積極的に取り組んでいます。
たとえば、メタボリック症候群の誘因の鍵となるのがレニン-アンギオテンシン系の活性化であることを当研究室では見出しており、その知見の臨床応用として、アンギオテンシン受容体拮抗薬をNAFLDやNASHの患者さんに投与しNASHの進展抑制を試みる臨床研究を、消化器内科との共同研究として実施中です。
また胆汁酸を利用した新たな糖尿病治療薬の発見を目標とした臨床研究も、渡辺光博准教授との共同研究で予定しています。我々は、肥満・糖尿病のマウスに胆汁酸の一種を投与すると、エネルギー産生が亢進し、脂肪蓄積の低下を伴う体重増加の抑制と糖尿病が改善されることを発見しました(注2)。そこでこの知見を応用し、一部の胆汁酸を選択的に増加させる薬剤を糖尿病患者さんに投与する臨床研究を行います。現在は体重を増やさずに糖尿病を改善する薬剤や体重を減らす薬剤は多くの選択肢が無く、毎日の臨床現場で臨床医が苦労をしています。この薬剤では体重の減少を伴う糖尿病の改善が期待され、新たなメタボリックシンドローム治療薬の創薬の可能性を秘めた臨床研究と考えています。

おわりに

腎臓内分泌代謝内科では、急増するメタボリックシンドローム患者の治療ニーズに対し、肝臓を含めた全身の臓器を診て、そのネットワークの異常に多面的にアプローチしています。正に"全身を診る内科"に相応しい腎臓内分泌代謝内科にどうぞおいでください。

(注1)Diabetes 56:984,2007
(注2)Nature 439:484,2006

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