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慶應義塾大学医学部 内科学教室 腎臓内分泌代謝内科

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大規模臨床研究への道

丸山達也・中谷英章

臨床研究とは

臨床研究とはなんでしょうか。簡単に言うとヒトを対象とした病気の解明や新しい治療法の開発です。きちんと定義すると「医療における疾病の予防方法、診断方法及び治療方法の改善、疾病原因及び病態の理解並びに患者の生活の質向上を目的として実施される医学系研究であって、人を対象とするもの(個人を特定できる人由来の材料及びデータに関する研究を含む)」(「臨床研究に関する倫理指針」(厚労省告示第459号))、ということですが、治療法(薬や医療器具)の効果を前向きの研究によってあきらかにしていく臨床試験(新薬の製造販売承認のために行う臨床試験が治験です。)も臨床研究に含まれます。
In vitroの系や実験動物を用いた研究ではどんなに面白い結果を出しても、"ではヒトの場合にはどうなのか?"と思われてしまうかもしれません。ヒトを対象とした臨床研究で証明された治療効果は、直接ヒトで効果が確かめられた、科学的に確固とした根拠に基づいたもの(Evidence Based)であるため、全世界で受け入れられやすく、あなたの発案した治療方法が世界のスタンダードになる可能性を秘めています。ヒトを対象としている、ということは非常に大きなメリットがあるのです。もちろん、基礎的な研究の裏打ちがあってこその臨床研究ですので、基礎研究と臨床研究は医学研究において両輪をなしていることはいうまでもありません。またヒトを対象にしていても、症例数の少ない研究では信頼性に乏しいと考えられ、どんなにあなたが有効な治療方法と信じても、一流誌は載せてくれないでしょうし、世界中の人が信じてくれるわけでもありません。

臨床研究の現状

CellやNatureといった基礎医学を中心とした一流誌においては、日本も欧米に伍して論文を発表していますが、New England Journal of MedicineやLANCETといった臨床研究が中心の雑誌への発表はまだ少ないというのが現状です。図1に示すように、基礎研究と臨床研究は連続し一体化した流れの中にあるものです。基礎研究がしっかりしているのですから、臨床研究も良い結果が多く出てもよいはずですが、日本では大規模な臨床研究を支援する体制が整っておらず、思うようには結果が出ていませんでした。従って治験の数も欧米に比べると少なく、それどころかアジアの中においても韓国や香港に追い抜かされつつあるのが現状です。

高血圧の領域を例に取ると、降圧薬であるアンジオテンシン受容体拮抗薬のカンデサルタンとCa拮抗薬のアムロジピンのハイリスク高血圧患者の予後に与える効果を比較したCASE-Jという5,000人を越える日本人を対象とした大規模臨床試験が2005年に発表されて大きな反響を呼びました。世界ではこのような大規模臨床研究がほかにもたくさん発表され一流誌に掲載されています。

このように膨大な症例数を集めるには、実際に患者さんと接して情報収集などをしてくれるCRC(クリニカルリサーチコーディネーター)や膨大なデータを管理し解析してくれるデータマネジメントの専門家など、医師以外の職種の人たちとチームを組み、多施設共同研究をしていくことになります。

日本でもこうした体制を整えて、一流の臨床研究を日本からどんどん発信できるようにするために、厚生労働省も文部科学省も力を入れ始め、当慶應義塾でも臨床研究を支援するクリニカルリサーチセンターが一昨年から稼動を開始しています。

臨床研究と聞くと、治験だけを思い浮かべる人が多いかもしれませんし、多くの症例を集めて治療効果の差を見出す最大公約数的な研究、という印象を持っている人もいるかもしれません。しかしバイオサイエンスの跳躍的な進歩により、遺伝子から始まりたんぱく質、細胞機能、臓器の機能そして最終的に疾患発症までに及ぶ連続した病因解析が、ゲノム、プロテオームあるいはメタボロームの全体像の解析をすることで可能になってきた現在において、実は臨床研究は"個の医療"実現に極めて近い位置にあります。最終評価項目としての治療法(薬剤)の効果の差だけではなく、集積したデータをいろいろな角度から層別に解析することで、治療法の有効性の差の裏にある遺伝子多型の違いや薬剤に対する細胞の反応性の違いなどを見出すことで更に新しい研究へと発展していくことができ、現在の医学の最先端を行くダイナミックでやりがいのある研究です。

腎臓内分泌代謝内科での取り組みと将来

腎臓内分泌代謝内科においても、新しい臨床研究として、軽症高血圧の患者さんに降圧薬を一定期間のみ投与して高血圧の退行効果をみるSTARCAST試験や、脂肪肝の患者さんに対して降圧薬を投与して脂肪肝の改善効果をみるFANTASY試験を行っています。帰室するあなたもこれらの臨床研究に参加することもできますし、新しい臨床研究を立ち上げることもできます。臨床研究の土台となる基礎研究も当科では多岐にわたって非常に盛んに行われており、臨床研究で生じた疑問を基礎研究として解析しても良いですし、逆に基礎研究で得た結果を臨床研究に応用してみる、ということも可能でしょう。

図1

図1 臨床研究の流れ

基礎研究を更に発展させてヒトを対象にして展開していくのが臨床研究であり、臨床研究には、治験(承認申請・販売申請)だけでなく、検証的な臨床試験や、探索的な臨床試験も含まれ、自分の研究テーマに合わせてデザインすることができる。


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