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慶應義塾大学医学部 内科学教室 腎臓内分泌代謝内科

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バクスター包括的腎代替療法展開医学講座

研究指針・理念

腹膜透析は、高齢化の進む日本において在宅で行える療法であり、患者の生活領域の拡大、経済活動の活性化などQOLに大いに貢献するとともに、如いては医療費抑制にも貢献できる療法と考えられる。しかし、腹膜透析には被嚢性腹膜硬化症などの未解決課題があり、適切な腹膜透析治療を提供するためには様々な対策を講じる必要がある。高齢化社会を迎える我が国での透析在宅医療の推進、腹膜透析の普及・技術開発・透析液開発・腹膜硬化症の病態究明と治療薬の開発などが急務である。このような現状から本講座では1)腹膜透析の問題点の克服、2)腹膜透析の普及ならびに包括的腎不全治療の実践、3)海外高度水準施設との連携の3つのテーマに積極的に取り組んでいる。更に腹膜透析研修を平成24年10月から開始しており、この研修制度の拡充により慶應病院を腹膜透析のハブ病院とした腹膜透析診療ネットワークの確立を目指す。

研究テーマ

1)腹膜透析の問題点の克服

腹膜透析のもっとも大きな問題点のひとつとして、被嚢性腹膜硬化症が挙げられる。この疾病は腹膜劣化と関連があり経年的に発症率が上昇する。その予防のため5~8年で腹膜透析を中止し、他の療法に変更することが望ましいとする報告がある。そのため、当講座では、腹膜線維化を抑制し、被嚢性腹膜硬化症の発症を防ぎ、さらに長期の腹膜透析が可能となることを目指して研究を進めている。

2)包括的腎不全治療の実践ならびに腹膜透析の普及

  1. 日本の腹膜透析の現状
     腹膜透析は身体にやさしい療法であり、透析中の血圧変動を抑制し残存腎機能の保持能に優れているなど、血液透析にはない腹膜透析特有の優れた性質を有する。これらのことは国際的に認められており、欧米諸国においては腹膜透析の高い普及率(7~22%*)を維持している。しかし日本では、3.2%*と低い普及率に留まっており、日本では包括的腎代替療法(腎不全治療)の実践が著しく遅れている。

    *United States Renal Data System Coordinating Center「2012 ATLAS of CKD %ESRD」から引用したデータです。
  2. 慶應義塾大学の腹膜透析診療
     この対策としてまず、2008年11月より専門の医師、看護スタッフをそろえた腹膜透析(CAPD)外来を開設した。この外来において、腎不全患者の療法選択と腹膜透析導入、腹膜透析管理(療養管理支援)、腹膜透析合併症管理、予防といったCAPD患者の集約的管理を実践している。また関連施設との研究会(慶應腹膜透析カンファレンス)を年間1~2回実施し、連携や症例検討などを通して、慶應グループ全体の診療レベルの向上に努めている。これらの活動を通してCAPD導入患者数は年間約15例と飛躍的に増加し(図1)、全透析導入患者のうちの25%程度を占めるに至っている。総患者数は2014年6月現在61名(連携病院を含むと120名以上)となり東京都内有数のCAPD患者数を管理する施設となっている。特に夜間自動腹膜透析装置(APD; Automated Peritoneal Dialysis)**を用いた療法を積極的に導入し、患者QOLを維持しつつ透析不足に陥らない療法を実践している。現在APD患者数は全体の約1/3を占めるに至る。

    **APDとは自動的に腹膜透析液を腹腔内に注排液する装置です。夜間睡眠中に活用することで、患者様のQOLを維持しつつ、高い腹膜透析効率を維持できます。無償でレンタル可能ですので、この装置を使用するために新たな経済的負担は発生しません。
    図1

    図1;当院における腹膜透析導入患者数の推移と治療成績

  3. 慶應義塾大学腹膜透析診療体制と診療技術向上の取り組み
    当講座の教育プログラムを履修した腎臓内分泌代謝内科の担当医師5名がローテーションを組んで24時間体制で対応する腹膜透析管理システムの確立を実現した。加えて、チーム医療の推進のため、カンファレンスや勉強会開催による医師、看護師等のスタッフ教育、国際的高度水準の腹膜透析診療遂行に向けてスタッフの北京大学(世界最多数のCAPD患者を有する施設)への派遣を行い、スタッフの腹膜透析指導・管理技術の向上に努めてきた。さらに2014年にはこれらの技術や経験を全国の施設と共有することを目的として、主要な全国の基幹病院や大学病院を対象とした腹膜透析研究会である慶應PDセミナーを開催するに至った(図2)。この研究会を通じて、腹膜透析診療の発展や腹膜透析診療連携の強化に結びつけるべく、今後も継続して開催していきたいと考えている。
    図2

    図2;慶應PDセミナー2014

  4. 腹膜透析普及への取り組み
     腹膜透析診療は、まだ社会に十分浸透した療法とはなっていないのが現状である。一部の限局した施設のみ活発に腹膜透析を行っているだけでは、患者サービスが十分であるとはいえず、緊急時の際などの不安要因となる。腹膜透析の高い診療レベルを広い地域で提供するために、本学の腹膜透析チームの構成員が慶應関連施設に赴任し、腹膜透析診療を実践する必要がある。2012年4月から構成員が、埼玉メディカルセンターに赴任した。それまで腹膜透析管理人数は10名程度であったが、2014年6月7日現在28名に増加している。さらに2013年度4月から別の構成員が済生会中央病院にも赴任し、2014年6月7日現在30名を管理している。このように今後も慶應腹膜透析チーム員による、その地域の腹膜透析基幹病院の構築を目指していく予定である。

     一方、日本透析医学会の統計によると本邦の腹膜透析の63.3%が、大病院で管理されている。この状況では、広く地域医療に根づいた一般的治療として社会に受け入れられることは期待できない。この状況を打破すべく、2013年4月から血液透析においては以前から慶應サテライト関連施設であった透析クリニックに腹膜透析患者を紹介し、管理してもらっている。この慶應腹膜透析ハブ病院構想(図3)を関連病院も含めて今後も広めていく予定である。

    図3

    図3;慶應腹膜透析ハブ病院構想

  5. 学会活動その他
     これらの実績が認められ、東京地区において高度な診療レベルを維持している施設の代表者で構成される東京CAPD研究会の幹事にも慶應腹膜透析チームチーフである鷲田直輝が就任する等、学外においても高い評価を得るに至った。2015年には伝統ある東京PD研究会の第25回を慶應義塾大学において行われることも決定している。また日本透析医学会評議員選挙にも慶應義塾大学腹膜透析チームチーフの鷲田直輝が当選し、同学会学術委員会委員ならびに総務委員会委員にも任命されている。東京、日本の透析医療の更なる発展への貢献を目指している。

3)海外高度水準施設との連携と教育プログラム(KEIO PD TRAP)

  1. 海外高度水準施設との連携
     本講座では、腹膜透析の国際的高度水準施設(カロリンスカ大学、北京大学など)へ医師看護師を派遣し、臨床及び研究に関する高度先端技術を獲得し、得られた知見を本院で実践することにより、我が国の医療・社会への貢献を目指している。
    2010年度も慶應グループ腹膜透析診療担当者(医師6人、看護師6人)は北京大学慶應義塾大学共同主催の腹膜透析研究会(7/9 ~7/11, 2010、 北京市)に参加した。
    2011年度は慶應義塾大学病院腎臓専門病棟腹膜透析担当看護師2名が北京大学でのナース研修会に参加した(6/6~6/12、 2011、 北京大学第三病院)。
  2. 教育プログラム(KEIO PD TRAP)
     慶應義塾大学腹膜透析診療技術や知識を広く国内の施設と共有すること、またPD診療を始めていこうとする施設のサポートを主な目的とした教育プログラムである慶應腹膜透析研修プログラム(Keio PD Training Program=KEIO PD TRAP)を企画、実行している。平成24年7月以降これまでにこのプログラムは合計12回開講し、4施設6名の医師、11施設22名の看護師に受講していただき高く評価されている(平成26年8月現在)。
    図3

    図4;KEIO PD TRAPレクチャー風景

    【KEIO PD TRAPのプログラム例と問い合わせ・申し込み】
    1. KEIO PD TRAP 医師向け研修プログラム例(リンク)(準備中)
    2. KEIO PD TRAP 看護師向け研修プログラム例(リンク)(準備中)
    3. お問い合わせや受講のお申し込み等(リンク)(準備中)

構成メンバー

・スタッフ

鷲田直輝

(特任講師)

(平成 11 年卒)

・学内メンバー

森本耕吉

(助教)

(平成 17 年卒)

篠塚圭祐

(助教)

(平成 19 年卒)

葛西貴広

(助教)

(平成 20 年卒)

・学外メンバー

井上秀二

(医員)

(平成 14 年卒)

細谷幸司

(医員)

(平成 17 年卒)

山口伸子

(透析認定看護師、療養支援室)

腎チーム

(PD担当看護師(腎臓専門病棟))

相川加代子

(PD 担当看護師(内科外来))

平島麻衣子

(PD 担当看護師(内科外来))


 PDチームは以上のメンバーで構成されており、診療スケジュールに則り、チームワークを重視した診療活動を行っている。また腎臓内分泌代謝内科の時間外担当医と連携し、24時間体制で対応できるシステムを構築している。

<診療スケジュール>

(1)第一、第三木曜日:

PDカンファレンス

(2)毎週木曜日:

PD回診

(3)外来    

毎週火曜日(13:00~):  

CAPD、腎臓外来(担当;鷲田)


第1,3,5週水曜(9:00~):  

CAPD、腎臓外来(担当;鷲田)


毎週木日(15:00~):  

CAPD外来(担当;森本)

(4)木曜日午後:

腹膜透析カテーテル関連手術

英論文

  1. Washida N et al Rho-kinase inhibition ameliorates peritoneal fibrosis and angiogenesis in a rat model of peritoneal sclerosis. Nephrol Dial Transplant. 2011 Mar 4. [Epub ahead of print]
  2. Naoki Washida, Shu Wakino, Koichi Hayashi, Takashi Kuwahara, Hiroshi Itoh: Brachial-Ankle Pulse Wave Velocity Predicts Silent Cerebrovascular Diseases in Patients with End-stage Renal Diseases, J Atheroscler Thromb.17(2), 165-172, 2010.

特許

  1. 整理番号:992009JP;腹膜肥厚・癒着の防止剤および腹膜透析液

和文誌論文

  1. 『腹膜透析QandA』東京医学社, 2014
     1)出口部感染を減らすにはどうすればよいですか?;鷲田直輝
     2)PD教育プログラムの作成するにはどうすればよいですか?;山口伸子
  2. 『臨床透析』日本メディカルセンター, 2014;30:1145-1150
     11)超高齢者・認知症;鷲田直輝

学会・研究会講演

  1. 第2回インターベンションネフロロジーカンファレンス『慶應腹膜透析普及への挑戦』, 鷲田直輝, 2014
  2. 第12回高齢者腎不全研究会シンポジウム『高齢者腹膜透析事例からの高齢者医療の考察』, 鷲田直輝, 2014
  3. 第57回日本腎臓学会学術総会ランチョンセミナー『PDの適応~処方とQOLの両立~』, 鷲田直輝, 2014
  4. 山梨CKDフォーラ2014特別講演『慶應義塾大学CKD治療の取り組み』, 鷲田直輝, 2014
  5. 第20回日本腹膜透析医学会学術総会シンポジウム『CAPD腹膜炎の実態と問題点』ISPDガイドライン, 鷲田直輝, 2014


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