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慶應義塾大学医学部 内科学教室 腎臓内分泌代謝内科

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メタボリックシンドローム先導医学講座

目的

肥満患者は現在2300万人程度であり、2000年から開始された国民健康づくり運動である"健康日本21"において重点目標となっています。このような状況から肥満を基盤にした「メタボリックシンドローム」が登場しました。メタボリックシンドロームなる医療概念が設定された理由は、あくまでその合併症の撲滅のためであり、そのためには、肥満からエネルギー代謝異常、生活習慣病の発症、さらに動脈硬化症の進展と臓器虚血による機能不全へと連鎖的に連なっていく多臨床領域にまたがる一連の流れに関して、その病態生理の共通基盤を分子レベルで正確に把握し、その異常をメタボリックシンドロームのマルチステージにおいて効果的に制御することが必須です。その実現のためには、多領域にわたるハイレベルでかつ実験アプローチの異なる研究成果を有機的に統合し、そのなかから、メタボリックシンドロームに特有の細胞代謝異常の共通項を抽出することが望まれます。

本講座は、日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社から寄贈された資金をもって設置され、異なったアプローチによりワールドワイドに展開されている、メタボリックシンドロームに関する複数の研究成果を統合し、新たな診断法・予防法・治療法の開発を生み出すことをめざすSponsored Collaborative Research Program (SCRP)を実践する母体となることを目的とします。

研究理念

当講座では、フォークヘッド転写因子FOXO1の糖代謝・エネルギー代謝での役割と、生体内でのその活性調節メカニズムについて研究しています。

FOXO1は、インスリン刺激により、PI3-kinase/Akt依存性にリン酸化され、核内より核外へ転出されることによりその転写活性が抑制される転写因子です。1997年に線虫C.elegansにおいて寿命調節に重要であるFOXO1と同じファミリーのdaf-16という転写因子が、インスリン様経路で活性が抑制されることから、注目されるようになりました(図1)。

図1

図1

既にFOXO1が様々なインスリン感受性臓器で糖・エネルギー代謝に重要な役割を担っていることが報告されていますが、未だ不明の点が多く残っています(図2)。

図2

図2

2型糖尿病、高血圧、高脂血症は、我が国における主要な死因である心血管病変のリスクファクターです。2型糖尿病、高血圧、高脂血症を引き起こす原因の一つとして、インスリン抵抗性があげられ、インスリン抵抗性を惹起する一つの要因として肥満があげられます。肥満は、エネルギー摂取量とエネルギー消費量が正のバランスを呈することにより生ずると捉えられています。エネルギー摂取のコントロールは、マウス、ヒトなどでは主に視床下部領域が重要な役割を果たしています。しかしながら、どのシグナルがどの標的ニューロンにどのように伝わり、どの標的遺伝子に至り、どのような蛋白が調節されるかといった分子メカニズムに関する研究はようやく端を発したばかりです。

さらに、肥満は、摂取されたエネルギーの絶対量だけで規定されるのではありません。肥満の主な関与臓器である白色脂肪組織自体にも、脂肪組織自体が増大する際、脂肪細胞の分化・増殖・肥大のいずれが関与しうるのか?それがどのように調節されているのか?といった分子メカニズムには未だ不明な点が多く存在します。したがって、これらの分子メカニズムを解き明かしていくことは、エネルギー摂取に呼応した脂肪細胞の理想的な反応を明らかにさせうると考えられ、エネルギー摂取-肥満-インスリン抵抗性と行った連鎖反応を阻止しうる分子の同定につながると考えられます(図3)。

図3

図3

さらに重要なことは、FOXOファミリーが細胞レベルで、細胞死・細胞周期調節・DNA修復・酸化ストレス抵抗性といった発癌にも関わる分子でもある点です。したがって、エネルギー代謝調節機構を分子レベルで明らかにしていくことは、単に成人病の予防・治療といった範疇を超え、個体レベルでの寿命、発癌への関与といった分野へも新たな一石を投じうる可能性を秘めていると考えられます(図4)。

図4

図4

私たちは、フォークヘッド転写因子であるFOXO1を中心にこれらの摂食調節・エネルギー代謝調節の研究を開始し、新たな分子を同定し、機能解析し、マウスを中心とした個体レベルで実証していくことを主眼においています。このことはヒト個体・ベットサイドでの臨床の場に生かされると考えています。

研究内容

  1. 摂食調節・エネルギー代謝調節におけるFOXO1の役割の研究
  2. 新規FOXO1結合蛋白の同定および生理作用・活性調節の解明

構成メンバー

・スタッフ

中江 淳

(特任准教授)

(昭和61年卒)

・学内メンバー

大平理沙

(助教)

(平成16年卒)

西村理沙

(大学院生)

(平成18年卒)

川野義長

(大学院生)

(平成19年卒)

小谷紀子

(大学院生)

(平成21年卒)

代表業績

  1. Cao Y, Nakata M, Okamoto S, Takano E, Yada T, Minokoshi Y, Hirata Y, Nakajima K, Iskandar K, Hayashi Y, Ogawa W, Barsh GS, Hosoda H, Kangawa K, Itoh H, Noda T, Kasuga M, Nakae J. PDK1-Foxo1 in Agouti-Related Peptide Neurons Regulates Energy Homeostasis by Modulating Food Intake and Energy Expenditure. PLoS ONE 2011: 6: e18324
  2. Shimizu N,Yoshikawa N, Ito N, Maruyama T, Suzuki Y, Takeda S, Nakae J, Tagata Y, Nishitani S, Takehana K, Sano M, Fukuda K, Suematsu M, Morimoto C, and Tanaka H. Crosstalk between glucocorticoid receptor and nutritional sensor mTOR in skeletal muscle. Cell Metab 2011;13:170-82
  3. Hariharan N, Maejima Y, Nakae J, Paik J, Depinho RA, Sadoshima J. Deacetylation of FoxO by Sirt1 plays an essential role in mediating starvation-induced autophagy in cardiac myocytes. Circ Res. 2010;107:1470-82
  4. Iskandar K, Cao Y, Hayashi Y, Nakata M, Takano E, Yada T, Zhang C, Ogawa W M, Oki M, Chua S Jr, Itoh H, Noda T, Kasuga M, Nakae J. PDK1/FoxO1 pathway in POMC neurons regulates Pomc expression and food intake. Am J Physiol Endocrinol Metab. 2010 298:E787-98.
  5. Nakae J, Cao y, Oki M, Orba Y, Sawa H, Kiyonari H, Iskandar K, Suga K, Lombes M, Hayashi Y. Forkhead transcription factor FoxO1 in adipose tissue regulates energy storage and expenditure. Diabetes. 2008;57:563-76.
  6. Nakae J, Cao y, Daitoku H, Fukamizu A, Ogawa W, Yano Y, Hayashi Y. The LXXLL motif of murine forkhead transcription factor FoxO1 mediates Sirt1-dependent transcriptional activity. J Clin Invest. 2006;116:2473-83.
  7. Cao Y, Kamioka Y, Yokoi N, Kobayashi T, Hino O, Onodera M, Mochizuki N, Nakae J. Interaction of FoxO1 and TSC2 induces insulin resistance through activation of the mammalian target of rapamycin/p70 S6K pathway. J Biol Chem. 2006; 281:40242-51.
  8. Kitamura T, Kitamura Y, Nakae J, Giordano A, Cinti S, Kahn CR, Efstratiadis A, Accili D. Mosaic analysis of insulin receptor function. J Clin Invest. 2004;113:209-19.
  9. Okamoto H, Nakae J, Kitamura T, Park BC, Dragatsis I, Accili D. Transgenic rescue of insulin receptor-deficient mice. J Clin Invest. 2004;114:214-23.
  10. Nakae J, Kitamura T, Kitamura Y, Biggs WH, Arden KC, Accili D. The forkhead transcription factor foxo1 regulates adipocyte differentiation. Dev Cell 2003: 4: 119-129.
  11. Hribel ML, Nakae J, Kitamura T, Shutter JR, Accili D. Regulation of insulin-like growth factor-dependent myoblast differentiation by Foxo forkhead transcription factors. J Cell Biol. 2003;162:535-41.
  12. Nakae J, Biggs III WH, Kitamura T, Wright CVE, Arden KC, Accili D. Regulation of hepatic insulin action and pancreatic -cell function by mutant alleles of the forkhead transcription factor Foxo1. Nat Genet 2002: 32: 245-253
  13. Kitamura T, Nakae J, Kitamura Y, Kido Y, Biggs WH 3rd, Wright CV, White MF, Arden KC, Accili D. The forkhead transcription factor Foxo1 links insulin signaling to Pdx1 regulation of pancreatic beta cell growth. J Clin Invest 2002: 110: 1839-1847
  14. Nakae J, Kitamura T, Silver DL, and Accili D. The forkhead transcription factor Foxo1 (Fkhr) confers insulin sensitivity onto glucose-6- phosphatase. J. Clin. Invest 2001: 108: 1359-1367
  15. Nakae J, Kitamura T, Ogawa W, Kasuga M, Accili D. Insulin regulation of gene expression through the forkhead transcription factor Foxo1 (Fkhr) requires kinases distinct from Akt. Biochemistry 2001: 40: 11768-11776
  16. Nakae J, Barr V, Accili D. Differential regulation of gene expression by insulin and IGF-1 receptors correlates with phosphorylation of a single amino acid residue in the forkhead transcription factor FKHR. EMBO J 2000: 19: 989-996
  17. Nakae J, Park BC, Accili D. Insulin stimulates phosphorylation of the Forkhead transcription factor FKHR on Serine 253 through a wortmannin-sensitive pathway. J Biol Chem 1999: 274: 15982-15985


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