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慶應義塾大学医学部 内科学教室 腎臓内分泌代謝内科

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糸球体腎炎

概要

腎臓は血液の中の老廃物を除去し、尿を生成する臓器であります。尿を生成する最初のステップは、血液を濾過(ろか)することでありますが、その濾過装置を「糸球体」(しきゅうたい)と呼びます。腎臓には数百万個の糸球体がありますが、この糸球体に炎症が起こるのが糸球体腎炎であります。
どうして糸球体に炎症が起こるのか?病気の主体が腎臓にあると考えられる場合は「原発性」の糸球体腎炎と言います。「原発性」の糸球体腎炎では病因が特定できない場合が少なくありませんが、何らかの免疫異常が原因であることが多いとされています。この免疫反応は通常は生体を、細菌やウイルスから防御するために働くものですが、その失調により糸球体腎炎が生じる可能性が考えられています。また他の感染症や悪性腫瘍の影響で免疫異常が生じ、その結果糸球体腎炎が誘発される場合もあります。
一方、「続発性」糸球体腎炎は、「全身性エリテマトーデス」、「紫斑病」など特定の全身性の疾患の部分症として現れます。したがって、「続発性」糸球体腎炎の場合は、まずは元の全身性の疾患の診断と治療を行うのが基本であります。

症状

一口で「糸球体腎炎」と言いましても、様々なタイプがあり、それぞれの症状には大きな違いがあります。ここではWHO(世界健康機構)の分類に基づいて、代表的な4つのパターンを説明します。

  1. 急性糸球体腎炎
    「急性糸球体腎炎」は、何らかの他の感染症状が出現した後に、腎臓の症状が現れます。急性糸球体腎炎を起こす感染で一番多いのは咽頭炎(いんとうえん)、すなわちのどの痛みを伴う風邪であります。皮膚の感染のあとに症状が出現することもあります。これらの感染の1-2週間後にむくみや血尿(けつにょう、尿に血が混じり、時には色が赤くなること)に気付くことがあります。血圧が高い、だるい、息苦しいなどの症状を認めることもあります。急性糸球体腎炎の場合は、これらの症状が自然に軽快することが多いことが知られています。
  2. 慢性糸球体腎炎
    慢性糸球体腎炎の場合は特に症状がないことが多いのが特徴です。健康診断で尿の異常(尿に蛋白・血液が検出される蛋白尿・血尿)を指摘されて初めて気付く人もいます。生理中の時、激しい運動のあとなどに一時的に尿異常を認めるときと異なり、異常が慢性的に持続する場合は「慢性糸球体腎炎」の可能性が疑われます。
  3. ネフローゼ症候群
    糸球体腎炎の中で、特に蛋白尿が高度(厳密には、1日に3.5g以上)の場合をネフローゼ症候群と言います。症状はむくみです。
  4. 急速進行性糸球体腎炎
    糸球体腎炎の中で最も重篤な経過を辿る急速進行性糸球体腎炎では、腎臓の機能が数週間から数ヶ月間で低下します。症状としてはだるさ、むくみ、微熱、咳や息苦しさなどが見られることもあるが、殆ど症状がない場合もあります。

診断

尿検査・血液検査・腎臓の画像検査・腎生検の組み合わせにより診断を進めていきます。

  1. 尿検査
    糸球体腎炎の基本検査であります。尿検査で蛋白尿または血尿を認めることが糸球体腎炎の特徴です。蛋白尿を定量するために、24時間の尿を貯めて、その一部を検査する「24時間蓄尿検査」を行う場合があります。
  2. 血液検査
    血液検査では糸球体腎炎の原因となりうる免疫異常の有無、腎臓の機能の指標となる血清クレアチニン値、ネフローゼの有無を知るために必要な血清蛋白やアルブミンの測定などを行います。
  3. 画像検査
    画像検査で一番多く用いられるのが腹部超音波検査(エコー検査)やCT検査であります。糸球体腎炎以外の病気の検索、腎臓の構造に大きな変化がないかを知るために有用です。
  4. 腎生検
    糸球体腎炎の状態を最も正確に知る方法は、腎臓の組織を針で採取し、糸球体を顕微鏡で観察し、その種類を検索する「腎生検」であります。他の検査よりも大きな検査なので、外来で行わず、1週間程度の入院が必要となります。

治療

治療法については、糸球体腎炎の種類(組織分類)によって異なります。ここでは、各種の糸球体腎炎に共通した一般的な治療法と、糸球体腎炎の種類によって異なる薬物療法について説明します。

  1. 一般的な治療法
    糸球体腎炎では、原則として塩分摂取を控える、過労を避ける、などの基本的な治療を行います。軽症の糸球体腎炎が疑われる場合は、特に薬物療法を行わずに、尿検査や血液検査を定期的に行い、その経過を外来で観察します。
  2. 薬物療法
    1. 血圧の薬
      高血圧は腎臓に負担をかける原因となりますので、血圧が高ければそれを下げる降圧薬(こうあつやく)を使用します。降圧薬の中でもアンジオテンシン変換酵素阻害薬(へんかんこうそそがいやく)・アンジオテンシン受容体拮抗薬(じゅようたいきっこうやく)といった種類のものは蛋白尿の改善にも有効であることが示されています。
    2. ステロイド薬
      重症の糸球体腎炎、例えばネフローゼ症候群の場合は、糸球体の炎症を緩和するステロイド薬を使用します。ネフローゼ症候群を引き起こす糸球体腎炎の中でも、分類が「微小変化群(ひしょうへんかぐん)」の場合はステロイド薬で、少なくとも一時的に治る(寛解(かんかい)する)ことがあります。他の種類のネフローゼ症候群、それに急速進行性糸球体腎炎でも殆どの場合はステロイドを使用します。
      また、腎生検の結果が「IgA腎症」(あいじーえーじんしょう)の場合は、ネフローゼ症候群でなくても、腎機能の保持のためにステロイド薬を点滴で投与する「パルス療法」を行う場合があります。
      このように、ステロイド薬は特定の糸球体腎炎に対して最も効果がある薬ですが、その反面、顔が丸くなる(ムーン・フェース)のを初めとして、様々な副作用を引き起こす可能性がありますので、投与前や投与中には副作用をチェックするための検査を行い、副作用の出現を予防する投薬も行います。
      1. 免疫抑制薬
        ステロイドの効果が不十分の場合、あるいはその効果を補助するために、免疫機能を抑える薬を使う場合があります。
      2. 血小板凝集抑制薬
        蛋白尿を減らす目的で使用する場合があります。
      3. その他の治療
        重症患者に対する特殊な治療として、血液を直接する浄化(じょうか)する血漿交換(けっしょうこうかん)や血液吸着(けつえききゅうちゃく)治療を行う場合もあります。

生活上の注意

  1. 食事の注意
    腎臓に負担となる塩分の取りすぎ、それに蛋白質の過度の取りすぎには注意します。ネフローゼなどでむくみがある時以外は脱水にならないよう水分を十分にとるように心がけます。
  2. 生活・仕事・運動の注意
    過度のストレス、睡眠不足、マラソンなどの過度の運動、炎天下の作業など脱水を引き起こす仕事は避けることが必要です。風邪をひくと腎臓に負担がかかりますので、うがいや手洗いなどを行い、風邪予防を心掛けます。また急速進行性糸球体腎炎やネフローゼ症候群は、病状が安定するまでは入院安静が原則となります。妊娠は腎臓に負担をかけますので、特別な配慮をします。

慶應義塾大学病院での取り組み

慶應義塾大学病院では糸球体腎炎の検査として行われる腎生検検査を週に1-2回行っています。また糸球体腎炎に対する各種の治療法を行える体制が整っています。

さらに詳しく知りたい方への書籍とwebサイトの案内

「日本腎臓学会:一般の方向けへ:腎臓病とは」外部リンク
糸球体腎炎診断のきっかけとなる蛋白尿・血尿の検査の意義について説明してあります。

「腎臓ネット」外部リンク
腎臓病の基本的な知識がわかりやすくまとまっています。

「ウィキペディア 糸球体腎炎」外部リンク
本ページとは異なった視点で糸球体腎炎を解説しています。



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