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慶應義塾大学医学部 内科学教室 腎臓内分泌代謝内科

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血液透析

概要

腎不全が進行し、腎臓の機能が一定レベル以下に低下する(健常者の10%以下)と、尿毒症を発症し、腎臓の機能を代行するための治療法である腎代替療法(じんだいたいりょうほう)が必要となります。腎代替療法には、血液透析、腹膜透析、腎移植という3つの治療法があります。日本では、275,119人の方が透析治療を受けていますが、そのうち、96.6%の方が血液透析を受けており、血液透析は腎代替療法としても最も普及した治療法です(2007年末時点、日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況」による)。

血液透析では、バスキュラーアクセスから血液を取り出し、透析液を環流させたダイアライザ(人工腎臓)で浄化し、体内に戻す治療です(図1)。通常、この治療を週に3回、4時間程度おこないます。わが国の血液透析の成績は世界でも群を抜いてよく、血液透析を20年以上続けている方が2万人近くいますし、仕事を続けながら血液透析を受けている方もたくさんいます。ただし、血液透析は腎臓を治療する方法ではなく、腎臓の機能を代行する治療法ですので、原則的に、一生涯続けることになります。

図1

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いつ血液透析を始めるのか?

いつ血液透析を開始するのかは、臨床症状、腎機能検査、日常生活の障害度、年齢、原因疾患などから総合的に判断されます。血清クレアチニン8mg/dL(健常者の腎機能の10%に相当する)が透析導入の目安と考えられています。血清クレアチニン8mg/dLを越えた状態は、腎臓の予備能はほとんどない状態ですから、風邪などのちょっとした体調の変化をきっかけに、いつ重篤な尿毒症が出現してもおかしくありません。したがって、尿毒症が出現しないうちに、血液透析を開始し、入院期間を短くして、早く社会復帰する方法が推奨されています。一方、尿毒症症状が出ていれば、血清クレアチニンが8mg/dL以下でも透析導入を考慮します。また、糖尿病性腎症の場合は、血清クレアチニンが比較的低くても、心不全などの症状が出やすいので、早めの透析開始が必要です。

なお、末期腎不全に伴う尿毒症症状とは

  • 全身のむくみ(特に、肺に水のたまる肺水腫)
  • 管理ができない電解質・酸塩基平衡異常
  • 吐き気、食欲不振などの消化器症状
  • 重度の高血圧、心不全などの循環器症状
  • 中枢・末梢神経障害、精神障害などの神経症状
  • 高度の貧血、出血が止まりにくくなるなどの血液異常

などです。特に、肺水腫、心不全などの命に関わる尿毒症が出た場合には、すみやかに透析を開始することが必要です。

血液透析を開始するにあたってひとつ準備をしなければいけないことがあります。それが、バスキュラーアクセスです。血液透析を行うためには大量の血液を体外に導き出す必要があります。このように血液透析のために血液が取り出せる出入り口をバスキュラーアクセスと呼び、代表的なものがシャントと呼ばれるものです。シャントは、通常利き腕と反対の腕の手首付近で、動脈と静脈をつなぐことで作ります。シャントによって、表面の静脈に大量の血液を流れるようになります。血液透析療法をおこなう際には、この大量の血液が流れている静脈に針を刺して、血液をダイアライザで浄化し、浄化した血液をもう1本の針から体内に戻します。シャントが使えるようになるまでには1ヶ月程度の時間がかかりますので、血液透析をそろそろ始めないといけないという段階になったら、事前に、短期間入院し、手術を受け、シャントを用意しておきます。

バスキュラーアクセスは、透析患者さんにとっては命綱のようなものであり、日常生活でもバスキュラーアクセスが閉塞しないような注意が必要です。

血液透析の実際

血液透析の役割は大きく2つに分けて考えることができます。ひとつは、血液の浄化であり、本来なら腎臓から体外に排泄される老廃物(尿毒素)やカリウムやリンなどを取り除き、カルシウムやアルカリなどを透析液からおぎないます。もう一つの役割は、本来、尿として排泄されるべき水分を除去することです。これらにより、本来の腎臓の機能のかなりの部分を代行することができます。

しかし、本来の腎臓の持つ内分泌機能(造血ホルモンであるエリスロポエチンの産生、カルシウム・リンのバランス保持に重要なビタミンDの活性化)は代行できません。また、血液透析では、体に必要なビタミンやアミノ酸などを失なってしまう一方、本来は除去しなければいけないアミロイドーシスの原因物質などを完全には除去できません。これらが、長期の血液透析患者さんの合併症につながります。

実際に、血液透析を始める際には、事前にバスキュラーアクセスを作っておいて、外来通院を続けながら、血清クレアチニンや症状などから血液透析が必要と判断したら、入院をしていただいて血液透析を開始します。血液透析を始める際には、通常10日間程度入院します。これは、血液透析開始時には、不均衡症候群などの症状が出やすいからです。血液透析の合併症などがなければ、退院していただいて、居住地または勤務先近くの通院しやすい外来透析施設に通いながら、通常週3回、4時間の透析を続けます。

血液透析患者さんにおこりやすい合併症


  1. 貧血
    エリスロポエチンは腎臓から分泌されており、慢性腎不全患者においてはエリスロポエチン不足による腎性貧血がほぼ必発です。腎性貧血の治療の基本はエリスロポエチン製剤の投与です。透析を受けている場合は、血液透析の際に、エリスロポエチン製剤の投与を受けます。ヘモグロビン(Hb):10-11 g/dLを目標として投与量を調整します。ただし、活動性の高い若い方の場合、Hb:11-12 g/dLとやや高めの値を目標とします。エリスロポエチンを投与しているにもかかわらず、貧血が続く場合には、鉄不足や消化管出血などを考えます。

  2. カルシウム・リン代謝異常
    長期の透析患者さんでは多様な骨の障害をおこし、透析骨症または腎性骨症と呼ばれます。このような骨の障害は、生活の質を落とすことになるので、重要な合併症と考えられています。このような骨障害を防ぐためには適正なカルシウム・リンバランスを保つことが重要です。透析患者さんにおける適正値は血清リン4.0-6.0 mg/dl、血清カルシウム 9.0-10.5 mg/dl、PTH intact(副甲状腺ホルモン) 150-300 pg/mlです。
    血液透析患者さんでは、血中のリンが高くなりやすく、食事でのリンの制限が必要です。ただし、多くの場合、食事制限だけでは高リン血症を防げないので、炭酸カルシウムやレナジェルといったリン吸着薬を服用します。
    腎機能が低下すると、腎臓におけるビタミンDの活性化がおこなわれないため、ビタミンD不足になります。ビタミンD製剤はリンを上げ、カルシウムを上げ、PTHを抑えます。ビタミンD製剤は通常、内服しますが、重度の二次性副甲状腺機能亢進症患者さんでは、透析後にビタミンD製剤を静脈投与するという方法もあります。また、このような薬による治療でも、副甲状腺機能亢進症が続く場合には、副甲状腺摘出術やエタノール注入療法(PEIT)をおこないます。

  3. 高カリウム血症
    透析患者さんの場合、高カリウム血症をきたしやすくなります。カリウム含有量の多い食事(生野菜、果物など)を避け、カリウムを減らす調理法(野菜をゆでこぼす)によって、透析前カリウム値:3.5-5.5 mEq/lとなるようにします。食事で十分にカリウムが下がらない場合には、カリメートなどのイオン交換樹脂製剤を服用します。

透析患者さんの食事

透析患者さんの食事で最も重要なのは、飲水の制限です。1日の食事外水分は体重1kgあたり15mlに尿量を加えたものとします。透析間の体重増加を、中1日で体重の3%以内、中2日で体重の5%以内を目標とします。血液透析開始前に比べればタンパク制限は緩くなりますが、リンとカリウムの制限がうまくできないことが多いようです。
維持透析期の食事療法について、日本腎臓学会の指針を示します。

総エネルギー:30-35kcal/kg標準体重/日
蛋白:1.0-1.2g/kg標準体重/日
食塩:0.15g/kg標準体重/日(残腎尿量100mlにつき0.5g/日増量可)
カリウム制限:1.5g/日
食事外水分:15ml/kg現体重/日(残腎尿量分の増量可)
リン:700mg/日
カルシウム:600mg/日

慶應義塾大学病院での取り組み

当院では、腎臓内分泌代謝内科と泌尿器科の協力のもと、中央透析室で血液透析をおこなっています。16床の透析ベッドで、入院中の患者さん、および、外来の患者さんの透析をおこなっています。年間、50-80人程度の患者さんに血液透析の導入をおこなっています。

さらに詳しく知りたい方への書籍とwebサイトの案内

「透析導入テキスト」(南江堂)門川俊明編著
当院の中央透析室スタッフで執筆した本です。現在、当院で血液透析を始められる方のテキストとして使っています。


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