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慶應義塾大学医学部 内科学教室 腎臓内分泌代謝内科

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高血圧症

概要

高血圧症は、持続的に血圧が上昇する病態で、その結果心臓、眼底、脳、大動脈、腎臓など種々の循環器臓器に障害を起こします。これにより、患者さんの日常生活を障害することになります。特に腎臓は障害されると血圧を上昇させ、さらに腎臓を障害させるという悪循環を形成しますので、蛋白尿や腎機能の指標のひとつである血清クレアチニン値が異常値を示す場合には注意を要します。一般に高血圧が存在してもあまり症状がなく健康診断で指摘されることが多く、40歳以上の45%が下記の高血圧に該当します。

症状

一般に高血圧は診察室での血圧を標準に判断されます。血圧値の程度によりI-III度に分類されますが、それに達しない値ではさらに至適血圧、正常血圧、正常高値血圧に分類され注意を喚起しています。なおこれらの値は診察室での血圧を指しています。

血圧ステージ

収縮期血圧   拡張期血圧

至適血圧

<120mmHg かつ <80mmHg

正常血圧

<130mmHg かつ <85mmHg

正常高値

130-139mmHg または 85-89mmHg

I 度 高血圧

140-159mmHg または 90-99mmHg

II 度 高血圧

160-179mmHg または 100-109mmHg

III 度 高血圧

≧180mmHg または ≧100mmHg

表1 血圧値の分類

最近では市販の自動血圧計が普及した結果、家庭での自己血圧を測定する患者さんが増えており、これを診療の参考にすることが支持されています。家庭での血圧は上腕での測定を行い、早朝あるいは就寝前の値を参考にします。

血圧測定部位

上腕

測定時間

 

起床時1時間以内

排尿後

朝食前

服薬前

座位1-2分間の安静後

就寝前

座位1-2分間の安静後

表2 家庭血圧の測定法

診察室血圧と自己血圧は値が異なるため次のように高血圧を設定しています。

血圧ステージ

収縮期血圧

拡張期血圧

診察室血圧

≧140mmHg

≧90mmHg

家庭血圧

≧135mmHg

≧85mmHg

表3 異なった測定法による高血圧の定義(mmHg)

診断

一般に、高血圧の症状は軽く、頭痛、肩こり、眼痛程度であり、その他の各標的臓器の症状(たとえば、どうき、息切れなどの心不全症状)が出現すると極めて危険です。そうなる前に適切な治療を受けなければなりません。
高血圧の臓器障害、心血管病として、さまざまな臓器での障害が発生します。たとえば、心臓では心肥大そのものでは自覚症状がなく、健康診断などで発見されます。腎臓では、高血圧による尿蛋白量は少なく、その前に夜間の排尿が頻回になるなどの軽微な症状です。

脳出血・脳梗塞

無症候性脳血管障害

一過性脳虚血発作

認知機能障害

心臓

左室肥大

心房細動

狭心症・心筋梗塞

心不全

腎臓

蛋白尿

微量アルブミン尿

糸球体濾過量(GFR)の低下

慢性腎臓病(慢性腎臓病を参照のこと)

血管

動脈硬化性プラーク

頸動脈内膜-中膜肥厚>0.9 mm

大血管疾患

閉塞性動脈硬化疾患

眼底

高血圧性眼底

表4 臓器障害・心血管病

高血圧の原因

高血圧の90%は、単一の原因を見つけることができなく遺伝性が濃厚である本態性高血圧です。それ以外の何らかの原因が明らかなものを二次性高血圧としています。両者を分ける理由として、二次性であればその原因を軽減あるいは取り除くことで高血圧そのものを排除することが可能となるからです。

二次性高血圧で最も多いのは腎性高血圧で、その中にも腎実質性高血圧と腎血管性高血圧があります。腎実質性高血圧とは、慢性糸球体腎炎、糖尿病による糖尿病性腎症、多発性嚢胞腎などが原因で腎障害をきたし高血圧をもたらす病態です。腎血管性高血圧では腎動脈がなんらかの原因で狭窄をきたし、腎臓から血圧を上げるホルモンの分泌が亢進した結果の病態です。
次に多い疾患は、内分泌性高血圧で特に副腎から分泌されるアルドステロンが過剰に産生される原発性アルドステロン症です。これら以外の内分泌疾患や、薬剤による高血圧もありますが、これらの原因を取り除くことができれば理論上高血圧は完治あるいは軽減しうるとされています。

高血圧

分  類

疾患、病態

本態性(約90%)

遺伝歴濃厚

二次性(約10%)

腎性

腎実質性

腎炎、糖尿病

腎血管性

繊維筋性異型性、動脈硬化

内分泌性

副腎皮質性

原発性アルドステロン症、クッシング症候群

褐色細胞腫

副腎髄質性

甲状腺性

バセドウ氏病、甲状腺機能低下症

副甲状腺性

副甲状腺機能亢進症

下垂体性

クッシング病、末端肥大症

血管性

大動脈炎、大動脈縮窄症

薬剤性

漢方薬、免疫抑制薬、鎮痛消炎薬(痛み止め)、経口避妊薬

表5 高血圧の原因

治療

(1) 非薬物療法

まず、血圧の非薬物療法(生活習慣の修正)として、食事塩分摂取制限、体重の是正、運動を行う、アルコール摂取量をへらすとともに、食事内容の改善として野菜・果物の摂取を促します(ただし重篤な腎障害では血清Kの上昇をきたすため推奨しない。また、肥満、糖尿病患者さんでは糖分の多い果物は勧めない)。その他、動脈硬化を起こしやすい因子として、コレステロールの取りすぎや禁煙を勧めます。
近年、厚生労働省が保健の効果や栄養成分の機能として有用であると認可された特定保健用食品が市販されていますが、これらの中に血圧に対して有効であるいくつかの食品(杜仲茶、ペプチドスープ、乳酸飲料など)があります。これらのなかには、ACE阻害活性作用をもった化合物が含まれており、高血圧の定義にまでは至らない程度の方に使用してもよいと思われます。詳細に関しては、独立行政法人国立健康・栄養研究所あるいは厚生労働省のホームーページを参照してください。

1. 食塩摂取

食塩摂取制限 < 6g/日

2. 食事内容

野菜・果物の積極的摂取

コレステロールや飽和脂肪酸の摂取を控える

魚(魚脂)の積極的摂取

3. 適正体重の維持

BMI(=体重[kg]/身長[m]2) < 25

4. 運動療法

心血管病のない患者さんに対して、30分以上

5. アルコール制限

エタノールとして男性20-30g/日以下、女性10-20g/日以下

6. 禁煙

 

表6 生活習慣の修正項目

(2) 原因の排除

高血圧の原因が明らかであれば、降圧薬の服薬とともにその原因をできるだけ排除あるいは軽減する治療を行います。たとえば、腎臓の血管が狭窄(腎血管性高血圧)していれば、現在では局所麻酔の下で血管内カテーテル手技により原因を取り除くことができます。また、原発性アルドステロン症の原因が副腎にできた良性腫瘍(腺腫)であれば、腹腔鏡下手術法などを用いて取り除くことができ、従来のおなかを開腹して手術する方法をしなくて済む割合が多くなっています。

(3) 降圧薬治療

原因の排除が困難な場合あるいは本態性高血圧症の場合には、何種類かの降圧薬の中からひとつあるいは複数種を選択して内服していただきます。現在、市販されている降圧薬として、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、Ca拮抗薬、利尿薬、β遮断薬、α遮断薬、中枢神経作動薬などがありますが、主として前5薬が中心に使用されています。

降圧薬の選択の仕方は患者さんの病態や年齢などを考慮しながら行います。たとえば、腎実質性高血圧の場合、蛋白尿を減らすことが将来の進行した腎不全への確率を減らすことが知られており、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)やアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)などのアンジオテンシン抑制薬を用います。脳梗塞の既往がある場合にはCa拮抗薬、ACE阻害薬・ARB、利尿薬が使用されます。その他の疾患に対する積極的適応は下記のようになっています(ただし、この表以外の使用も可能です)。

日本高血圧学会から出された高血圧治療ガイドラインであるJSH2004では、腎障害に対してCa拮抗薬が使用可となっていましたが、今回のガイドライン(JSH2009)では、積極的使用とされていません。ただし、腎障害では血圧のコントロールが極めて重要であり、またどうしてもCa拮抗薬を使用しなければ血圧が下がらないことが非常に多く経験されます。その際に使用を推奨できるCa拮抗薬として、血液濾過の場である糸球体障害を起こしにくいとされるエホニジピン、アゼルニジピン、シルニジピンが挙げられます。

Ca拮抗薬

ARB/ACE阻害薬

利尿薬

β遮断薬

左室肥大

心不全

心房細動予防

頻脈

狭心症

心筋梗塞後

蛋白尿

腎不全

脳血管障害慢性期

糖尿病・メタボリックシンドローム

高齢者

表7 主要降圧薬の積極的使用

慶應義塾大学病院での取り組み

  • 腎臓内分泌代謝内科では、高血圧専門医に該当するJFSH会員が、5名常勤医として働いています(全国で300名程度しかおりません)。さらに、少なくても毎日常に1名のJFSHが外来を行っていますので、必ず専門性の高い診療を受けることが可能です。
  • 当診療科では、二次性高血圧のなかでも特に頻度の多い腎臓疾患や内分泌疾患を同時に扱っています。一般に、腎障害を伴う高血圧のコントロールは手こずることが多いのですが、当診療科では長年の経験があります。また、最近増加している原発性アルドステロン症の症例数は日本でも有数であり、その診断や治療に関する知識が豊富な医師が多数常勤医として勤務しています。

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高血圧治療ガイドライン外部リンク


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