交通・アクセス
サイトマップ
慶應義塾大学医学部 内科学教室 腎臓内分泌代謝内科

トップ > 受診されるみなさま > 代表的な病気の解説 > 副腎腫瘍

副腎腫瘍

概要

副腎(ふくじん)とは、左右の腎臓の上にある小さな内分泌臓器(左右2つあります)で、皮質と髄質からできています。皮質では、アルドステロン、コルチゾール、副腎男性ホルモンを作っています。髄質では、カテコラミン(アドレナリン(エピネフリン)、ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)を作っています。
副腎で作られるこれらのホルモンは生きていくために必要ですが、副腎に腫瘍ができてこれらのホルモンを過剰に作ると高血圧、糖尿病などの病気の原因となることが知られています。

1.原発性アルドステロン症

【概要】

高血圧症の5%~10%をしめる病気です。若年から高齢者まで広く認められ、女性にやや多い病気です。アルドステロンは、ナトリウムの貯留により血圧を上げるホルモンで、大部分は副腎の片側の腺腫(良性腫瘍)で、一部が両側の副腎全体が大きくなる過形成から過剰に作られる病気です。 通常は遺伝しません。脳卒中、心血管疾患、腎疾患などの頻度が本態性高血圧(原因不明の高血圧)よりも高く、降圧薬による血圧のコントロールに加えて、アルドステロンの作用を抑制することにより脳卒中、心血管疾患、腎疾患などの予防が可能です。
日本人では、副腎の片側に腫瘍(腺腫)ができる場合は約80%で、両側の副腎全体が大きくなる過形成が8%程度と考えられていますが、これらの腫瘍がなぜできるのかは現時点ではわかっていません。

【症状】

一番共通しておこる症状は血圧が高くなること(高血圧)です。アルドステロンの過剰により血液中のカリウムが低下すると、脱力感、筋力低下、多尿などが起こることがあります。また、多尿、夜間尿がこの病気の初期症状であることがあります。

【診断】

1.スクリーニング、2.確定診断、3.局在診断の3段階で行います。

  1. スクリーニング法
    まず高血圧の方を対象に、外来(午前中)で血漿アルドステロン濃度の高値、血漿活性レニン濃度の低値、アルドステロン/レニン比の高値の時に、スクリーニング陽性と判断します。
  2. 確定診断法
    次に、入院(約7~10日間)の上、以下のいくつかの検査により確定診断を行います。(1)カプトプリル負荷試験、(2)立位フロセミド負荷試験、(3)生理食塩水試験、(4)経口食塩負荷試験、(5)フルドロコルチゾン負荷試験などを行います。日本内分泌学会では(1)~(3)のうち2種類以上陽性、米国内分泌学会では(1)~(5)のうちいずれか1つ以上陽性ならば確定診断としています。
  3. 局在診断法
    原発性アルドステロン症の腫瘍は小さい例が多く、腫瘍の大きさが5mm未満ではCTで検出できません。また、40歳以上では副腎偶発腫瘍(偶然に副腎腫瘍を認める例)の頻度が増えるので、その腫瘍がアルドステロンを作っているとは限りません。そこで、入院(3泊4日)の上、「副腎静脈サンプリング検査」(別項参照)が必要となります(放射線診断科により施行)。この検査により、アルドステロンを左右のどちらか片側、あるいは両側で作っていることを判定できます。しかし、この検査は高度の技術を要し、右側の副腎静脈へカテーテルが挿入できない例もあり、最終的な判断が難しくなることもあります。

【治療】

  1. 手術療法
    片側の副腎だけに腫瘍がある場合は、泌尿器科にて、副腎腫瘍を取り除く手術を行います。通常は、内視鏡でお腹の中を覗きながら、腫瘍を摘出します(腹腔鏡下副腎摘出術)。この手術法では翌日から歩行、食事が可能です。
  2. 薬物療法
    手術が無理な方、希望しない方、または両側の副腎が腫れた方の場合は、薬で血圧を下げて、アルドステロンの作用をおさえこむ薬を用いる治療を行います。アルドステロンが高いまま放置すると脳卒中、心筋梗塞、腎不全などの危険が高いので、薬物療法は一生涯続ける必要があります。

【生活上の注意】

食塩の摂取量をひかえて(1日6~7gまで)、血圧のコントロールをしっかり行うことが最も重要です。

2.クッシング症候群

【概要】

副腎から慢性的にコルチゾールを過剰に分泌するために、特徴的な症状を示す病気です。脳卒中や心血管疾患の合併が多く、早急な診断と治療が必要です。男女比は1:4で女性に多いです。通常は遺伝しませんが、一部まれに遺伝性の例もあります。

【症状】

過剰なコルチゾールにより、高血圧、糖尿病、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)、中心性肥満(胴体や顔に脂肪が多く、手足は細い)、筋力低下、多毛、出血しやすい(手足に外傷がないのにあざなどの皮下出血がある)、女性では無月経などをおこします。

【診断】

診断は、コルチゾール過剰を証明するために、血液や24時間尿中のコルチゾールの高値やデキサメタゾン(デカドロン)抑制試験(別項参照)における血清コルチゾール濃度高値により診断します。
また、腹部CT、下垂体MRI、副腎皮質シンチグラム(アドステロールシンチグラム)などの画像検査も行い、副腎、下垂体における腫瘍の有無を検査します。局在診断としては、大きく分けて、1.片側あるいは両側の副腎に腫瘍がある例(副腎性クッシング症候群)、2.下垂体にACTH(副腎皮質刺激ホルモン)を過剰に作る腺腫がある例(クッシング病)、3.下垂体以外にACTHを過剰に作る腫瘍が異所性にある例(異所性ACTH症候群)の3つの病気の型に分けられます。

【治療】

治療は原則として、手術による病巣の摘出術、すなわち、1では、腹腔鏡下片側副腎摘出術(泌尿器科)、2では下垂体摘出術(脳神経外科)、3では異所性腫瘍摘出術(外科)を行います。両側副腎腫瘍の場合には、両側副腎摘出術または一部副腎を残す両側副腎亜全摘術を行います。手術が無理な方や、手術の後もコルチゾール高値を認める再発例では、薬物療法も行います。コルチゾールの作用をおさえこむ薬剤は現時点では使えないので、手術療法が優先されます。

【生活上の注意】

食塩の摂取量をひかえて(1日6~7gまで)、血圧のコントロールをしっかり行うことと、筋肉が萎縮して骨量も減少して骨折しやすくなるので、転倒に注意してカルシウムなどをしっかりと摂取して、骨量が非常に低下すれば骨粗鬆症の薬物治療も主治医と相談して行うべきです。

3.褐色細胞腫

【概要】

カテコラミンを過剰に分泌する腫瘍です。大部分は、片側の副腎髄質にできますが、傍神経節など副腎以外の場所にも発生します。この病気は、腫瘍から突発的にカテコラミンが大量に血液中に分泌されると、重症の高血圧発作をおこして、脳卒中や心筋梗塞などを起こす危険が高いので、早急な診断と治療が重要で、放置すべきではありません。 近年、遺伝子変異による本疾患の例が多く見つかるようになり、遺伝が関与する例も10%~20%程度あると考えられています。また、悪性例(悪性褐色細胞腫)も10%程度あります。

【症状】

典型例では、高血圧、動悸(どうき)、頭痛、発汗、不安、蒼白(そうはく)などの症状を示しますが、多彩な症状があり、特に褐色細胞腫に特異的な症状を示すとは限りません。

【診断】

血液、尿中カテコラミンや、尿中メタネフリン、ノルメタネフリンなどの高値により診断します。また局在診断として、副腎CTやMRI検査により腫瘍を証明します(平均4cm)。最近では、特に症状はなく、人間ドックなどで副腎に偶然腫瘍が発見され(副腎偶発腫瘍といいます)、精密検査の結果、褐色細胞腫と診断される例も増えています。副腎髄質や傍神経節以外の場所に転移した時に「悪性褐色細胞腫」と診断します。

【治療】

治療は、薬物治療(α遮断薬やβ遮断薬)による高血圧のコントロールを十分に行った上で、手術による腫瘍摘出が原則です。前述の2つの病気とは異なり、褐色細胞腫は約10%に再発例があるので、手術治療の後も一生涯定期的なホルモン検査と画像検査を行うことが大切です。悪性褐色細胞腫では、降圧治療(α遮断薬、β遮断薬)に加えて、腫瘍の可能な範囲での摘出術、化学療法、アイソトープ(MIBG)内照射などの治療が行われます。

【生活上の注意】

手術までは、降圧薬(α遮断薬、β遮断薬など)による厳格な血圧のコントロールを行い、手術の後は、定期的なホルモン検査と画像検査の継続が大切です。

4.副腎偶発腫瘍

【概要】

副腎疾患の検査以外の目的で行った検査において、偶然副腎に腫瘍(大きさ1cm以上)を認めた場合、副腎偶発腫瘍といいます。副腎腫瘍の中で、最も多いです。手術による摘出が必要か否かは、悪性腫瘍の可能性とホルモンを過剰に作っているかの2点により判断します。

【症状】

腫瘍からのホルモン産生の過剰の有無により様々で、無症状のことが多いです。

【診断】

悪性腫瘍(副腎癌)の可能性は、腫瘍の大きさが3cm以上であることや、画像検査で悪性を疑わせる所見の有無で判断します。ホルモンを過剰に作っているかについては、前述の1~3の病気について検査を行います。

【治療】

検査の結果、ホルモンを過剰に作っている所見がなく、腫瘍の大きさが3cm未満であれば、その時点では手術を行わずに経過観察とします。そして、半年~1年ごとにホルモン検査と画像検査を行います。 一方、腫瘍が3cm以上またはホルモンを過剰に作っている所見がある場合は、手術による腫瘍摘出につき総合的に判断します。

慶應義塾大学病院での取り組み

  • 厚生労働省、日本内分泌学会の全国規模の診断基準や疫学調査の分担研究者として、最も適した診断法や治療法の確立に取り組み、豊富な副腎疾患の診療経験に基づいて診療を行っており、他院からのセカンドオピニオン外来にも対応させていただいております。
  • 当院では、腎臓・内分泌・代謝内科、放射線診断科、泌尿器科、中央臨床検査部の4部門が共同で副腎疾患の迅速、精密な診断と治療を行っております。これらの総合的な高度先進医療が1つの病院で受けられる施設は、全国でも数が限られています。

さらに詳しく知りたい方への書籍とwebサイトの案内

「原発性アルドステロン症診療マニュアル」(診断と治療社)

「褐色細胞腫診療マニュアル」(診断と治療社)

厚生労働省科学研究費補助金難治性疾患克服に関する調査研究「副腎ホルモン産生異常に関する調査研究」外部リンク

難病情報センター「原発性アルドステロン症」(医療従事者向け・一般利用者向け)外部リンク

日本内分泌学会「原発性アルドステロン症の診断基準作成と治療指針作成」外部リンク

日本内分泌学会「悪性褐色細胞腫の実態調査と診療指針の作成」外部リンク

米国内分泌学会による原発性アルドステロン症診療ガイドライン「Case Detection, Diagnosis, and Treatment of Patients with Primary Aldosteronism: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline」外部リンク

米国内分泌学会によるクッシング症候群診療ガイドライン「The Diagnosis of Cushing's Syndrome: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline」外部リンク


甲状腺機能亢進症

一覧へ戻る

下垂体腺腫


↑PAGE TOP